<2003.5.24> 渓に抱かれ

・・・・・ 快晴 ・・・・・

流木に身を預け瞼を閉じると ” ドン ドン!”と

一定のリズムで伝わる渓の鼓動 流れの胎児と

化した私は 渓の息遣いと同化し その佇まいの

一部と変化を遂げて行く そんな過程を白濁する

意識の奥で 感じ取っていた。


”スッ!”と鋭角に走る目印が ヤマメ特有の

アタリを示した 間髪置かず呉れた合せに竿は

思い切り撓り ヤツはそう広くも無い淵底で

突進を繰り返しては 逃走を図る 取り込みの

場所は無いかと 後方を見やると 其処に広がる

拳大の石が積み重成る 岸辺へと導いて

竿の張りを利用して 自らの体と共に 一気に

引き摺り出した この渓でヤマメにとっての

生息限界線は もう何時か過ぎている物と

確信していた 此の先は 岩魚一色の世界に

変わり 再び我々の野心を満たしてくれるの

だろうか


大場所の連続と渓相は移り変わり 何時の

間にか 小振りの滝頭に出た 名も知らぬ小さな

黄色の花が 一面に貼り付く岩盤の上で横に

なると 右肩の段を伝い降り 水面から3b程の

棚上から 攻め込む釣友の姿を ぼんやりとした

意識の中で見ていた。

幾度かめの投餌に ときめきの瞬間は 突然の

様に現れる・・・・・・・・・

満月の様に撓る竿 釣友の位置取りでは

抜き上げるにも どうにも成らない様子で

やおら起き上がり岩場を降り 釣友の背中に

吊るすタモを外すと 僅かに残る岩の割れ目に

手を探り入れ身を伸ばし 宙釣りの魚を掬う。


タモに収めた魚体は オレンジの小斑点は

目立たない物の 明らかにヤマト岩魚と確認

出来る固体であった。


                     OOZEKI

滝と大場所の連続

うっかり覗かれた姿

この日一番のヤマメ

暗い滝壷を攻める釣友